NPO法人TEDICは、2017年5月12日をもって、団体設立から6周年を迎えました。
設立当時には、まさかこんなに長く活動することになるとは思いもせず、大学院の略称TEDにI(Ishinomaki)とC(Campus)をくっつけただけの団体名。若干の後悔もありながらも、いまでは「TEDICさん!」と呼んでいただけるようになりました。本当にありがたいことです。
毎年(当たり前ですが)、この設立記念日の前後は「子どもたちを巡る相談」の件数が増える時期。
家庭訪問をし、学校訪問をし、来所相談を受け、相談同行をする。その度に、いつも思っているのは「なんとか、繋がれ・・・!」ということ。
どんな境遇におかれていようとも、絶対にあきらめないということを、固く誓いながら、いつも訪問用の車に乗り込みます。
この1年間、私たちは確実に、より深刻な状況に置かれる子どもたちに関わりつつあります。
昨年度より事業を石巻市から受託、本格的な行政との協働関係に入りました。これまでもインフォーマル・フォーマル問わず、繋がりのなかで、公的機関からの相談を受けていましたが、今年度はそれ以上に「繋ぎ」を受けることが多くなっています。学校、教育委員会、スクールソーシャルワーカー、児童相談所、ケースワーカー、病院などなど、事務所の電話がなり「子どもの相談なんですが・・」とケースを受けることも、もはや日常のようになりつつあります。
ネグレクト、親からの暴力、自殺企図、ドラッグ、覚せい剤、反社会組織、ごみ屋敷、長期のひきこもり、親の病気、いじめ・・・・
子どもたちと出会うたびに思うこと、それは「生きていてくれて、ありがとう。」と いう出会えたことへの感謝。そして、「どうして、この子がこんな思いをしないといけないのか」という憤り。保護者との面談をすることも多くなりましたが、いわゆる貧困の連鎖を感じざるを得ません。それは決して経済的な「貧乏」の連鎖ではなく、それらを含む何かしらのキッカケから始まる「困難」の連鎖です。
「この子にもっと早く出会えていたら・・・」
「この子たちが高校を卒業したら、あるいは辞めてしまったら・・・」
「仕事をやめて、ひきこもったら・・・」
「死にたい、と命を絶とうとしたら・・・」
支援のゴールとは何か?という問い。最近、私たちが取り組んでいることはゴールがないことなのではと思います。一人ひとりが、その人らしい幸せを噛み締め、人生を全うするまで、支援が正解だったのかどうかはわかりません(いや、それでもわからないかもしれません。)。もしかしたら、そんなゴールのない支援、「なにか困ったことがあったときに、誰かが手を差し伸べてくれる」を生み続けることができる社会、地域をつくることこそが、私たちの使命なのかもしれないと思うのです。
最近、うちの職員が担当しているとある地域で「ひとりぼっちで夜の時間を過ごしている男の子」を、地域のおばちゃんが個人的に月に何回か預かって、一緒に夕ご飯を食べて、お家で過ごすという営みが生まれています。あくまで、個人的なもの。このおばちゃんと、男の子の保護者との関係の中で、行われていることです。制度でいうところの夜間保育や子育て短期支援事業が、制度でもなく、サービスでもなく、NPO法人の事業でもなく、あくまでおばちゃん家と男の子の家との間の関係で営まれている。しかも、おばちゃんもそれを「こんなことがあってね・・・。余り物のシチューだったんだけどね・・・」と嬉しそうに話す。きっと、この男の子は「困ったら、おばちゃんとこ行こう!」って思っているはず。
僕たちの活動の意味って、きっとこういうところにあるんだろうと思っています。僕も含めた職員たちの仕事は、地域の中で「この子たち、ほっておけない!」と思う人たちを少しずつ増やしていくこと。その背中をちょっとずつ押しながら、地域の中のちょっとしたお節介な活動をサポートしていくこと。うちの法人でいれば、関わってくれている学生ボランティアのみんなや、地域住民のみなさん、市民による活動をサポートしていくこと。そして、それでも支えきれない時は、僕たちがなんとか支えに行く。そんなことなのかなぁと思っています。
まだまだ、僕たちの法人だけではもちろん、石巻市内のあらゆる団体が集まったとしても、出会えている子どもたちはほんの一握り。石巻に住むすべての子どもたちにとって、石巻が優しいまちになれるように。もっともっと活動の輪が広がっていきますように・・・。
2017年5月12日 NPO法人TEDIC代表理事 門馬優